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Showcase Vol.2 Stockholm × Tokyo × Object ~作曲家座談会 5

・ スウェーデンとノルディック諸国のシーン、文化について


森:その辺のノルディック諸国特有の、なんというか、軽さっていうんですかね、ユーモラスな感じってどこから来てるんでしょうね?


宗像:まあ、スウェーデンは戦争をもう何百年(注:ナポレオン戦争以後は戦争に直接参加していない)もやってませんので。


森:あー、戦争…。


宗像:やっぱり戦争だよね。「強さ」ってのはないかな、スウェーデンの国民性から言って。「頑張るぞ!」っていうのはないんですよ。


森:マッチョじゃないんですね。


宗像:マッチョじゃないですね。まあ、それよりももっと精神的な意味で、追い詰められたっていう経験がないんですよね。

追い詰められて、それで弾けて頑張るといったことがないので。日本はそういうのありましたよね。今はどうだか分からないけれど。


渡辺:うんうん。


宗像:やっぱり、第二次世界大戦がなかったら、ここまで発展した国にならなかっただろうし。例えばポーランドなんか行くとなんか感じますよね、彼らの演奏の仕方というか、なんか深いものが。ヴァイオリンの弓一弾きで「グーーッ」っていう何かを感じますけどね。


森:ふーむ。それ、スウェーデン以外のノルディック諸国でも同じ感じしますか?


宗像:そうですね、ノルウェー、デンマーク、あまり変わんないんじゃないかな。フィンランドは違いますね。


森:言語的にもね、随分違うみたいですもんね、フィンランド。


宗像:違いますね。


森:アイスランドは似てますか?


宗像:アイスランドは、ちょっと(言語的に)コミュニケーションできませんね。古いスウェーデン語みたいな感じらしいですよ。


森:この間ね、ゆきちゃんの「さっきょく塾」(渡辺さんが主宰するオンライン作曲コース:https://www.sakujuku.site)で、アイスランド人作曲家のがレクチャーをしたんですけど(注3、他のノルディック諸国との文化的な意味での親和性、みたいな話をしてたんですよね。やっぱり価値観とか、美学的なものが似てたりするんですかね?

(注3:Guðmundur Steinn Hafsteinsson、https://gudmundursteinn.net


宗像:どうなんでしょうね。でもスウェーデンの観点からすると、アイスランドってメンタル的にすごく遠いですよね、やっぱり。


森:ノルウェーとかと近いのかな?


宗像:そうですね、ノルウェー、デンマークとはまあ。ノルウェーは特に言語がすごい似てるんで。


森:ノルウェー語とデンマーク語も似ているんですよね?


宗像:いやまあ、3カ国似てるんですけど、スウェーデンの観点から言うと、ま、スウェーデンがその基本の、標準語みたいな。あくまでスウェーデンの観点からいくとですけど。


森:スウェーデンが中心だと思ってるんですね。


宗像:そうそうそうそう。


渡辺・森:笑


宗像:というか、まあ実際に言葉の癖が一番少ないかな。


渡辺・森:ふーん。


宗像:ノルウェーは、例えばなんというか、結構地方独特の訛りがあるなっていうような喋り方をするんですよね。

例えば、スウェーデン語で「イッケ・サオン(真実ではないという意味、語尾に向けてイントネーションが下がる)」っていう言葉があるんですけど、それがノルウェー語だと、「イッテソン(語尾に向けてイントネーションが上がる)」。


全員:笑


宗像:で、デンマーク語は、スウェーデン人がよく言うのは、スウェーデン語を喋ろうとするんだけど、ポテトが喉につっかかってる感じ。


渡辺・森:笑


渡辺:ひどい笑。


宗像:デンマーク語できませんけど私。でも数なんか数えてもそんな感じなんですよ。


森:面白いですね。


宗像:私デンマーク好きなんですけど。仕事もデンマークがかなり多いし。


森:そこはかなりあれなんですよね、交流というか、ツアーとか仕事っていうのは、スカンジナビアは行ったり来たり?


宗像:そうですね。


森:フィンランドも含めて?


宗像:フィンランドはあんまないですね。


森:じゃあ、ノルウェー、スウェーデン、デンマークが行き来が多い感じなんですか。


宗像:Curiousと個人でいうと、デンマーク、スウェーデンですね。あんまりノルウェーもフィンランドも行かないんですけど、それに比べたらドイツとかの方が多い感じです。ただ人によっては、ノルウェー、スウェーデンはかなり行ってますね。


森:やっぱり似たシーンがある感じですかね?受け入れやすいというか。


宗像:文化的にはね。ただ、現代音楽でいうとやっぱり、分かれてますね。みんな小さな国だから、もうちょっと協力すればいいのに笑。


森:どんな感じで分かれてるんですか?


宗像:うーん、スウェーデンの現代音楽って、メインストリームがオーケストラ中心なんですよね。で、オーケストラのために書くのを作曲家が目標にしていて、で、その作曲家が、現代音楽のメインストリームをやっている、みたいな。だから、僕とかマーリンとか、メインストリームじゃないんですよ、全然。


森:アウトサイダーなんですね。


宗像:すごいアウトサイダーですよ、実は。知ってました?笑


渡辺・森:笑


渡辺:じゃあ、すごいコンサバってことですか?そのオケ書いてる人たちは?


宗像:そうですね。かなり、トーン・ポエムっぽい。かなりインプレッショニスティックな、キラキラ、サワサワ、鳥の声をピーピーやったり…とか多いですね。逆にデンマークの方が面白いかな。スウェーデンはやっぱり人が多くって、作曲家も多いんですよね、他の国に比べると。だからまだ古い人たちが業界に多い、みたいな。


森:ふーーん。


宗像:ジェネレーションのチェンジができてないんですよ、まだ。ミュージシャンもまだおじいさん、おばあさんたちが結構頑張ってるみたいな。で、若い人もあんまり出てこないんだよね。でもデンマークは人口が少なくって、作曲家も元々少ないから、もうかなり若い、僕のジェネレーションより若い人が、音楽祭とかでもテイクオーバーしてるのかな。

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