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Showcase Vol.2 Stockholm × Tokyo × Object ~作曲家座談会 6



・ ダルムシュタット音楽祭について



森:そしたらちょっと、ダルムシュタットとかの話を聞いてもいいですか?


宗像:ふふふ、どうぞ笑。


森:ダルムシュタットも、多分どんどん傾向が変わってきてると思うんですよね、おそらく。で、さっき話したドイツ的な価値観やスカンジナビア的な美学とか色々あるけど、後者の側が取り上げられるようになってきているっていう印象が個人的にはあるんですが、そういう印象ってありますか?所謂ドイツ現代音楽的なものに代わってそういうものが受け入れられているというような。


宗像:ていうか、まず金銭的なものが大きいんじゃないのかなとか思うんですけどね。


森:というのは?


宗像:まあスカンジナビアはやっぱり、ファンディング的なものはあるんで、例えばHuddersfield(注4)とか、スカンジナビアのアンサンブルばっかり呼んでるんですよね。

(注4:イギリスの都市、毎年現代音楽祭が行われている:https://hcmf.co.uk


渡辺:あ、そうなんだ。


宗像:うん。毎年ね、Huddersfieldって、スカンジナビアの一国をテーマにして、今年はデンマーク、今年はスウェーデンといった感じで。で、スウェーデンからミュージシャンを呼ぶんですけど、それは自分たちで全部払えないから、何万くらい払ってくださいって言って呼ぶんですよね。


渡辺:ああー


森:Curiousもそんな感じだったんですか?Huddersfield。


宗像:まあそんな感じですよね。


森:ダルムシュタットも同じ感じ?


宗像:ダルムシュタット、、2回目は全額は払ってもらえませんでしたね。かなり自分たちで払って。


森:うーん、お金の問題か、、


渡辺:笑

宗像:まあ全部が全部そういうのじゃないと思うんですけど、ただ、やっぱりかなりお金のことでスカンジナビアの作曲家とかミュージシャンが呼ばれて、それでまあ名前が売れて、それでまた呼ばれるみたいなことはあるかもしれませんけどね。


森:少なくとも呼びやすいってのはあるのかもしれないですね。呼んでみたいなと思った時に実現しやすいというか。ちなみにスウェーデンから見たダルムシュタットってどうですか?


宗像:うーん、そのさっき言ったそのメインストリーム、一般の作曲家から言うと、ダルムシュタットって何?みたいな。ドナウエッシンゲン??といった感じです。で、こないだ例えばマーリンがドナウエッシンゲンで賞をもらいましたよね、Orchestra Prizeを。でもスウェーデンでは全然報道されなかった。まあその、作曲家連盟の新聞にちょっと載ったかもしれませんけど、ほとんどみんな「だから?」っていう。


渡辺:だから?笑


宗像:スウェーデン国内の奨学金とか獲った方が、みんなすごいねーって言いますよね。まあその、エステティックが全然違うんで。


渡辺:ふーーーーーん。


森:じゃあ宗像さん的にはダルムシュタットとかの方が、エステティック的には共通点を見つけられる感じですか?


宗像:どうだろう、最近は勝手に自分のやりたいことをやってるみたいになってますね。


森:あー、あんまり他人は関係ないみたいな?


宗像:関係ないようになってきましたね。だから、恥ずかしながらダルムシュタットで最近何が起きているのかよくわからないんですけど。それは裕紀子ちゃんの方が知ってるんじゃないかな?


渡辺:いや、私も最近のは追えてないですね。でもどこも似たような印象というか。でもドイツ全体で似たような傾向、エレクトロニクスがついてて、ビジュアルがついててというのはあるかもですね。Impulsもそうだし、なんかドイツ語圏全体が似たような味付けになっているような印象が。


宗像:え、そうなの?でも、ドイツも大きい国で、色んなことをやってるんじゃないかという気がするんですけど。


渡辺:うーん、どうだろう、どうですか?笑


森:え?うーーん、どうだろう。でも宗像さんもさっき、ダルムシュタットはマルチメディアの印象があると、


宗像:うん、そうですね。ダルムシュタットはマルチメディアに走ってる印象がありますね。


森:なんかそういう方が呼ばれやすいのかなというイメージはありますね。もちろん色々とやってる人はいると思いますけど。


宗像:まあでも結構思うに、ああいうでかいフェスティバルに曲を出す時に、あんまり真面目な曲を出すというよりは、どう目立つかみたいなのがあるかな。あの中で生き残るには、どう人と違うことをするかみたいな感じですよね。


森:実際にダルムシュタットに出ていた頃は宗像さんにもそういう意識はあったんですか?


宗像:うーん、あったねえ。ありましたねえ。その2010年にオランダのグループに演奏された曲が、結構軽い気持ちで書いたんですよね。


森:うん。


宗像:で、後々話を聞くと、人によっては面白いと感じた人もいるらしいんですけど、どういうわけかその時はね、コンサートの直後からみんな「何、この曲」とか言って、面白くなかったらしいんですよ、周りが。で、文句も言われましたしね、「あんな曲なんで書くのよ」って言われたりもしましたしね。


渡辺:ふーん


宗像:個人的にもあんまりね、強い曲じゃないなみたいな。だから2012年に帰ってくる時には、もうなんでもいいから目立つ曲を書きたいといって書いたんですよね。


渡辺・森:笑


宗像:だからさっき言った、空き缶とかいっぱい乗っけて、最終的にみんなめちゃくちゃになるんですよ、ビール缶がみんなガチャガチャガチャーって落ちて、ピンポン・ボールが200個くらい散らばって。で、ワインボトルがガシャンガシャン壊れて。で、人気ありましたよね、あの曲はね。


渡辺:ありましたよね。


宗像:でも、すごくなんか、後からあれはよくなかったと思いましたね。自分にとってすごくよくなかった。


森:その心は?


宗像:その心は?笑点?笑


渡辺:笑


宗像:で、あれでお客さんに面白くなかったって言われたら、ああ、もうちょっと真面目にやらなきゃいけないんだなって思うじゃないですか。それがなんというか…


森:調子に乗っちゃったんだ。これで行けるぞと。


宗像:そうそうそう。これで行っちゃえーって。ていうか、別に芸術的価値を考えた曲じゃなくて、どれだけ目立てるかみたいにして作った曲だから、ダルムシュタットの観客でさえ、どれだけ軽薄というか、ちゃんと聞いてくれていないんだなと思いましたね。


渡辺:ああーー。落胆。


宗像:ある意味では。


渡辺:確かにあそこに行くとみんな落胆して帰るみたいなところありますよね、いろんな意味で笑。


宗像・森:笑


宗像:そうだね笑。でもまあ人が多いとやっぱりなんでも価値が下がるみたいな。


渡辺:うーん。


森:ちなみにその2010年の曲はなんていう曲なんですか?


宗像:それはね、「Sweeping Buddhist(掃除をする仏教徒)」


森:Sweeping Buddhist?笑


宗像:それはね、調べてもでてきませんよ笑。


森:あ、そうなんだ笑。


全員:笑


宗像:でてこないよ笑。でも、それは2008年の曲なのかな。まあでもそのうち発掘して演奏したら面白いかもしれませんね。


森:じゃあ今は振り返りたくない過去、みたいな?


宗像:そうそうそう笑。


全員:笑


宗像:でもあれはきついですよね。世界的に名の知れた音楽祭で曲が演奏されて、曲が気に入られないと。コンサートの前はみんな話しかけてくれて、頑張ってねとか言ってくれるんですけど、コンサート終わるとみんな、なるべく話さないようにって笑。避けてくんですよね。


渡辺:え、でもそんな印象なかったけどなあ。


宗像:って言ってくれるのは…


渡辺:…私だけ?笑


宗像:いやいや、他に何人かはいたけどね。


森:それ、掃除機使ったってやつですよね?普通に目立ちそうな感じですけどね。


宗像:あ、そっかー。まあ掃除機だけは目立ったけど、曲自体はちょっと弱いなと。強いコンセプトもないし。曲が何をするかってのがないんですよね。ただ曲があるみたいな。


渡辺・森:ふーん


森:じゃあ今はもう結構、方向性が変わって、あんまりダルムシュタットとかに興味は無くなった感じですか?


宗像:あんまりないですね。いやもちろん、大きな音楽祭で演奏したいとかってのはありますけども、別にダルムシュタットじゃなくてもいいかなと。


森:うん


宗像:でも、知ってる人がたくさんいて楽しいですけどね。

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